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気がつけば(忍×宍)
「忍足、帰ろうぜ」
そんな宍戸の言葉にも、もう慣れたものだ。
「ちょっと待ってェな。ところで自分、ちゃんとHR出て来たんか?」
帰りの挨拶をして担任が教室を出るのと、宍戸が忍足のクラスに入って来るのはほぼ同時だった気がする。忍足は呆れて溜め息を吐いた。
「ああ、出た出た」
宍戸は適当に返すだけだ。
昨日も一昨日も先週も。
宍戸は忍足の予定も聞かず迎えに来る。
部活も引退し、確かに暇と言えば暇なのだが、こうも当然とばかりに迎えに来られると「俺にだって都合があるんや」と言い返したい気にもなる。
けれど忍足は、それを口にするでもなく、くたびれた学生鞄に教科書を放り込んでいく。
最近、心のどこかで、宍戸の迎えを楽しみにしている所も少なからずあるのだ。
「行くぞー」
「あ、ああ」
気づけばもう背中を向けている宍戸に急かされるまま、忍足は席を立った。
毎日一緒に帰宅しても、特別する事も無い。
今日も今日とて忍足の部屋で、外が真っ暗になるまでゲームをし続けるのだ。
「自分、ゲームしたいだけで家に来とるんと違うか?」
「…んな事ねーって」
続編が出るたびに話題になるロールプレイングゲームに、宍戸はここ何日か没頭している。忍足と言えば、購入して数週間でクリアしてしまったものだから、今さら見たところで何の感慨もなく、ゲームに熱中する宍戸の背中を眺めている。
忍足としては、宍戸が部屋にいようがいまいが、自分のしたい事、たとえば宿題などはきちんとこなせるので特に問題もないのだが、どこか腑に落ちない。
「宍戸、コーヒー入ったで」
何だかんだ言っても、こうして面倒をみてしまうのだ。
邪魔にならない場所にカップを置くと、忍足は自分のコーヒーに口を付ける。
宍戸はミルク入り。自分はブラックで。
甘党ではないがブラックでは飲めない宍戸の為にミルクまで常備してしまうあたり、忍足は自分の心の広さに感心してしまう。
でも、なぜだろうか。不思議とそんなに嫌な気分ではないのだ。
いや、むしろ楽しいというか…。
「やべ、目疲れた」
「なら休めや。コーヒーも冷めるし」
宍戸は、忍足に言われるまでもなくゲームの区切りをつけると、漸くコントローラーを手放して忍足の隣に腰掛ける。
「いただきます」
「はいどうぞ」
そして、二人して夕方のテレビニュースを見ながら、コーヒーを啜るのだ。
それから暫くして、宍戸は必ず夕飯前には忍足の家を後にする。
「…自分、毎日ええんか?親御さん心配せえへん?」
呟くような問いかけに、宍戸は振り向きもしないで返事をする。
「今さらだろ。部活やってた頃はもっと遅かったし」
「まあ、そうやけど…」
「迷惑か?」
大して悪びれた感じもなく宍戸が問い返せば、忍足は首を傾げた。
「何で?そんな事あらへんよ」
そう、それどころか落ち着く。
いつの間にか自然。
…嬉しい、なんて。
忍足は思わず首を振った。
この気持ちは何だろう。
今まで友達を呼ぶ事なんて考えもしなかった自分の家に、宍戸がするりと入ってきた。
あまりに当たり前のように居着き、気づいたら。
そう、宍戸が帰ってしまうのが何だか寂しい。
独り暮らしには、もう慣れたはずなのに。
「なあ、忍足」
コーヒーを味わい一つ大きく息を吐くと、宍戸はカップを置き、少しだけ高い位置にある忍足の横顔に声をかける。
「俺が何で最近お前のとこ来るか分かるか?」
「何で?」
突然の質問に、忍足は聞き返す。
そんなのは忍足が聞きたいくらいだ。さっきからずっと気になっていたのだ。
なんかさ、と。
宍戸は言葉を切って頭をかいた。
少し伸びた髪が指の間を滑る。
意外と柔らかな髪なんだなァ…と忍足が気づいたのも、宍戸が部屋に来るようになってからだった。
「俺、お前といると、何か落ち着くんだよな」
宍戸はぽつりとそう言って、困ったように忍足を見つめた。
「…え」
「別に一緒に何する訳でもねえのに、どうしてかな」
まさか、宍戸が同じような事を思っていたなんて。
「これって、何だろ?」
そう宍戸は続けるが、忍足は驚きのあまり言葉も出ない。それは自分の方が知りたいくらいなのだから。
宍戸は相変わらず困惑の表情で、いつもはキツい位の眉が、若干ハの字に傾いている。
そんな表情をぼーっと眺めていたら、忍足はつい宍戸の手に自分の手を重ねていた。
自分でも意識しない位に自然と。
宍戸はぴくりと身体を震わせたが、跳ね除けはしない。
その瞬間。
「宍戸に、傍にいて欲しいんや」
するりと零れた呟き。
自分の言葉に、忍足は「あァ」と納得する。
そうか、それはきっとそういう事。
「そうや、宍戸が好きや」
何度か頷いて、確信したように忍足は言う。
すると、宍戸も納得したように小さく頷いて、忍足の目をまっすぐ捉える。
「…そっか、俺忍足が好きなのか」
何をするでもなく一緒にいたい。
隣り合ってコーヒーを飲めば、身体中がぽかぽかとして、嬉しかった。
宍戸は、ここ最近の自分を振り返ってクスっと笑う。
「俺、忍足が好きみたい」
もう一度言葉にして、へへっ、と照れ隠しに笑って見せれば、忍足も。
「俺もや」
人ごとのように落ち着いた声の割に、その横顔は少し火照っているように映った。
そして、重ねた手を今度はしっかりと握りあう。
そうすれば、もっと広がる温かな気持ち。
「やべー。俺初恋だァ」
染まった頬を掌で隠すようにして宍戸が言えば、忍足はたまらないとばかりに身もだえする。
「何や、そないに可愛ええ事言わんといて~」
気づいてしまった気持ちは、あっという間に膨らんで。
もう、少しだって離れていたくなかった。
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