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明けましておめでとうございます!そして、お久しぶりでございます…。

久しぶりすぎて、アップの仕方も、自分で書いていた話も忘れてしまう始末(汗)。
久々にシリーズ読破の上で続編開始致します☆

今回は跡部視点です。

-お知らせ-
2月開催予定の「氷帝Royale」に参加いたします!新刊出す予定です♪いちごさんからゲスト原稿早々に頂いてるんで、意地でも!!


いつか穏やかなSquare12

「宍戸、そんな顔しないで」
ジローはそう言って、宍戸の背中に張り付いた。
後ろから抱きつく姿はジローが甘えているように見えるが、本当のところ宍戸がよろめきそうなのを支えていたのかも知れない。
扉が閉まり、忍足と岳人の背中が視界から消えると、宍戸はほんの少し眼を細めた。それが、ジローには辛そうに映ったのか…。
「そんな顔って、どんな顔だよ」
苦笑する宍戸は、もういつもの宍戸だ。一瞬だけ、精気を無くしたかのように見えた瞳が、しっかりとジローを捉える。
「…何か、どこか遠く見てるみたいな顔してた」
「そんなことねェだろ」
宍戸は笑い飛ばす。
そんな姿に、ジローはむっとしたように唇を尖らせ、一時よりは丸みを帯びた宍戸の頬を両手で挟んだ。
そして、顔を傾け、ゆっくりと自分の唇を寄せていく。
「っジロー!」
俺は、反射的に手を伸ばしていた。
ジローの肩を鷲掴み、宍戸から引き離す。
「跡部!?」
驚いたのは宍戸の方で、間の抜けた声で俺の名を呼ぶ。
当のジローは、俺の行動が読めていたかのように余裕の表情で振り返った。
「ちぇっ。ケチ!」
「ケチじゃねェよ」
呆然とする宍戸を残し、俺たちは睨みあう。とは言っても、ジローはどこか悪戯な笑みを浮かべて俺を見上げているのだが。
「仕方ないなァ」
そしてジローは、おどけたような声で語尾を上げる。
「何が」
何故だか面白くなくて、俺は鼻を鳴らした。
「そんな目くじら立てなくたって、大事な宍戸に手は出さないよ」
「…」
何だって突然そんなことを…。
俺も、そして宍戸も言葉を無くすが、そんな中、ジローだけは呑気な声で続けた。
「もう好きにすればいいじゃん。跡部も宍戸も、思うようにすればいいんだよ」
「ジロー…」
「そりゃさ、こうやってまた皆でバカ騒ぎできるようになってさ、安心したよ?でもさ、やっぱりなんか違うんだよね」
急に、むずかる子供のようだ。
「ん~、もう、だからさァ!」
ほんの少しの齟齬が気持ち悪いとでも言うように、ジローはその顔を歪める。
そして。
「俺たちは居なくならないし、宍戸も居なくならない。少し形は変わっても、俺たちは一緒なんだよ」
挙げ句、最後には何でもないように言い捨てた。
どうしていいか分からなくて視線を合わす俺たち二人に、ジローは「イーっ!」と、歯をむいて顔を顰める。
「もう面倒なんだよ!追っかけてさ、逃げてさ、捕まえてさ、喧嘩してさ、仲直りしてさ!好きにしちゃって!」
そう言って、忍足と岳人が出て行った扉を乱暴に押し開けた。
「素直になっちゃえばいいんだよ!ねっ?」
最後に満面の笑顔を見せ、ジローの背中は扉の向こうにするりと消える。

「…何だ、あいつ」
呆気にとられたようだった宍戸は、残された気まずい空気を誤魔化すように、わざと明るい声を出して俺を振り返る。
こういう所が、宍戸らしいというか。
いつだって周りに気を回す。俺たちの間で、そんな気を使う必要なんてないのに、こいつは本当にいつだって…。
「なあ、宍戸」
ああ…俺は、ジローの発言に感化されたのだろうか?
ごちゃごちゃ考えていた事が、どうでも良く思えてきた。
忍足と岳人が一緒に暮らしたって、俺が気にしすぎなだけで、案外宍戸自身は何とも思わないのかもしれない。
同居を決められない岳人の後ろめたさも、ただの取り越し苦労とも限らない。
今さら俺が本音を晒したら、宍戸が居なくなるかも、とか。困らせたくないとか。そんな事は、蓋を開けてみなければ分からないではないか。
宍戸が何を想うかなんて。何を悲しみ、何を喜ぶかなんて。どれだけ理解しているつもりでも、結局は宍戸本人にしか分からない事だ。
それならば。
やらずに後悔するくらいなら、実行に移して後悔する方がまだマシだろう。少なくとも俺はそういう主義だ。

「宍戸」
「ああ?」

なあ宍戸、今度こそ。
もう一度やり直すから、今度こそ、お前の胸の中に俺という人間を刻んで欲しい。
そういう意味で好きになってくれなくてもいい、むしろ憎んでくれたっていい。ただ、お前にとって「どうでもいい人間」になることが、背筋が凍るように恐ろしい。

俺は、察しよく身体を緊張させた宍戸を、強引に抱き寄せた。
それでも逃げないお前は、やはり、こうなるべきなのだろうと俺は自分を納得させる。

「俺じゃ駄目か?…いや、俺が良いだろ?」
静かに、けれどもはっきりと、子供に言い聞かせるように。

囁きかけた宍戸の耳元が火照ったのを、俺は唇に感じる。
ものすごい速さで、宍戸の全身が熱を増す。

「跡部…」

身じろぎする宍戸を、俺は強く締め付けた。

抱いた後、偶然街で出くわしたこいつは、俺を責めるでもなく、恥じらうでもなく、あの夜を思い返していた。
俺に対する感情が、全く、ほんの少しも映らなかった瞳。
あんな虚しさはもう要らない。

もう、いいじゃないか。
宍戸が逃げたって、地の果てまで追いかけるさ。俺が居る、アイツ等がいる。宍戸はどうやったって、ここから逃げられない運命なんだ。
そう思える勇気をジローがくれた。

「初めてお前を抱いたあの夜から、俺はお前が好きだ」

宍戸の声にならない吐息が、抱き寄せた俺の首元で揺らいだ。

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