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猫みたいなリョーマに翻弄される海堂。
リョ海ですよ、リョ海(笑)。限りなく海リョ風味ではありますが。


 (リョ×海)

海堂がロードワークを終え部室に戻ると、いつもなら自分の荷物しか残っていないロッカーに、もう一人分の荷物が残っている。
部活終了後に鍵を預かり一人ロードワークをするのはいつものことで、最初は心配して一緒に残ると言った乾ですら、最近では「無理はするなよ」と一言残して先に帰宅している。
…一体誰だろう?
部室を見渡し、ベンチに無造作に置いてあるラケットに気付くと、ひと目で誰のものだか分かった。
「…越前?」
いつもなら真っ先に桃城の自転車の後ろに乗って帰る越前が何故残っているのか。
理由は何にせよ、越前が戻らないことには部室が閉められない。

部室を出てコートの周りを歩き始めると、すぐに越前は見つかった。
いつも練習中に休憩する木陰で、組んだ腕を枕に仰向けに寝転がっている。
先ほどまで残っていた強い西日を避けるように、顔の上にはトレードマークの帽子が日除けとしてのせられていた。
「まったく、しょうがないヤツだな…」
鍵が閉められないじゃねえか…とぶつぶつ文句を言いながらその姿に近づく。

「越前、越前!」
傍らにしゃがみ込み、枕にしている腕をゆすると「う~…」と声を漏らすが、今度はころりと横を向き丸くなってしまう。
転がり落ちた帽子を拾いそれでパシパシ腕を叩いて起そうとするが、気持ちよさそうな寝息をたて全く目覚める気配がない。
いくら初夏とはいえ、日が沈みかけた外で眠ってしまっては体が冷えてしまう。
「寝起きの悪いヤツだな…」
とりあえず羽織っていた自分のジャージ脱ぎその小さな体に掛けてやると、すぐ隣に腰をおろす。
自分と反対側へ顔をむけ寝転んでいる越前の表情は伺い知れないが、規則的に上下する肩を見ると深く寝入ってしまっているのだろう。
あまりに気持ちよさそうで、起すのを躊躇ってしまう。
そして「少しだけだからな」と自分への言い訳のようにつぶやく。

猫みたいなヤツだ。
それが越前に対する印象だ。
最近、練習中やお昼休みなど、ありとあらゆる場所で越前が声を掛けてくる。
今までは全くと言っていい程会話らしい会話など無かったのに、どうした風の吹き回しか、楽しそうに自分の後ろをついて回るのだ。
そして、自分のことを「好きだ」などと言うのだ。
自分の後ろを一定距離を空けて付いて歩き「何か用か?」と凄んで聞いたところで、ニコニコ(ニヤニヤ?)笑って「何でもない」と答える。
たまにスルスル~っと脇へ寄ってきたかと思えば「俺、海堂先輩が好きだよ」と告げ、またスルスル~っと去っていく。
あまりの驚きに声も出せずに、真っ赤になって立ち尽くしていると「まだまだだね、先輩」
といつもの台詞。口の端だけ上げた強気の笑みで振り返るのだ。
毎日がそんな調子だから、どこまで本気と取っていいのか判断しかねる。
「いつもの海堂なら、怒鳴り飛ばして終わりなのにね」
そう言って微笑んだ不二の楽しそうな表情を思い出す。
確かに、そうだ。
いつもならば怒鳴り飛ばして、皆に怖いと言われるこの目つきで睨みつけて終わりだったはずだ。
しかし、越前にはちっとも効かなかったのだ。
「俺知ってるよ。海堂先輩、ホントは凄く優しいんだ」
下から見上げるように上目遣いで見つめてくる越前に、思わず海堂は手を伸ばしかけた。
桃城とのケンカの時のように殴るためではなく…。
その大きな瞳を、口の端を上げて生意気に微笑むその唇を、柔らかく揺れるその黒髪を「可愛い」と感じてしまったから。
その頬に触れたいと思ってしまったから。
そんなことがあってから、不二に指摘された様な、らしくない日々を送っているのだ。

ここ数週間の出来事を思い返していると、あっと言う間に日が沈みかけている。
いよいよ越前を起さないと本当に風邪をひいてしまう。
「越前!いいかげんに起きろ!」
さっきより激しく体を揺らすと、さすがに目が覚めたのか海堂を振り向き眠そうに目を擦っている。
「…あれ…?先輩もう戻ったの?」
そう尋ねる声に、海堂はがっくりと肩を落とす。
いったい何十分前のことを言ってるのだか…という「がっくり」と、やっぱり自分を待っていたのかという「がっくり」。

きっと、越前が部活後も残っていたのは最近の行動の一貫なのだろうとは感じていたが、認めたくない自分がいたのだ。
なぜなら、それを喜んでしまう自分が想像できたから。
自分には何も求めず、ただ付いて回る生意気な後輩に惹かれている気持ちを認めてしまいそうだから。
そして、こうしてうたた寝しながら自分を待っている姿が、愛しいと思ってしまう自分をも認めてしまいそうだから…。

ぐるぐると自分の気持ちに思い悩んでいる海堂の姿に、越前はくすっと笑うとその両腕を上に伸ばす。
「先輩、起して?」
「…ああ」
素直に手を貸しその体を引き起こすと、勢い余って越前の小さな体が腕の中に転がり込んでくる。
「!?」
びっくりして突き放そうとするが、思いがけず強い力で越前の腕が抱きついてくる。
「!?!?」
「先輩、もう俺の事好きだって認めなよ」
「!?!?!?」
「ね?」
自信たっぷりの越前の台詞に、硬直したまま両腕を上にあげる海堂の姿はまるで降参のポーズだ。
「俺の事、好きだよね?」
大好きな猫の様な眼で、上目遣いに小首を傾げる姿。
その愛らしさに、海堂は本当の「降参」する。
「……ああ、そうだ」
「ちゃんと言ってください」
「……越前が好きだ」
海堂は降参ポーズの腕をゆっくり越前の背中に回すと優しく抱きしめ、やっとの思いで告白する。

「最初はただ生意気な後輩としか思わなかったんだけどな…」
そう呟き、躊躇いながらも柔らかなくせ髪を弄ぶ海堂に、越前はぷうっと膨れる。
「海堂先輩テニス以外は全く興味なさそうだったから、俺結構頑張ったんスよ」
ただの後輩から、気になる後輩になるよう。
付かず離れず少しずつ気を惹き、最後は海堂が自分でその気持ちに気付くように…。
テニス以外に実は興味があるらしい「猫」を意識して。
「先輩、もう逃げるの無しっスよ!」
「…ああ」
「じゃあ誓いのキスしてください」
「ここでか!?」
「もちろん!」
そう言うと、越前は今まで甘えるように抱きついていた手を海堂の首に回すと、力強く引き寄せる。
「!?」
声を上げる間もなく唇を奪われ、荒々しく舌を絡められる。
「…んっ」
熱い舌で口腔を蹂躙され、やっと開放された時には受け止め切れなかった唾液で唇が濡れ光っている。
呆然と息をつく海堂に、越前は「越前らしい」笑みを浮かべると、その指で光る唇をぬぐってやる。
「逃げようったって、逃がさないけどね」
ニヤッと勝気な笑みをもらす越前に、海堂は溜め息をつく。
そうだ。これが、越前の本当の姿だ。
きっと、自分がチラッとの思い描いた「子猫のような越前」との穏やかな恋人同士とは程遠い、スリリングな毎日が待っているのだろう。
でも、惚れた弱みとはよく言ったもので。
「お前であれば何でもいい」
溜め息まじりの呟きに越前は不思議顔だが、海堂は子悪魔のような愛しい彼の頬に優しくキスをした。

後日談。
「不二先輩。成功っす」
満足気に笑う越前に「ほら、どうだ」とばかりに不二が胸を張る。
「僕の言った作戦で間違いなかったでしょ?」
「マジ、ありがとうございます」
越前が真剣にお礼を言う姿など、きっと不二以外お目にかかれないだろう。
「海堂はストレートに押してもダメだと思ったんだよね。ゆっくり仕掛けて、最終的に海堂自身に気持ちを認めさせる」
そう、今回のアプローチは不二の指南の下進められた事なのだ。
「確かに。不二先輩にアドバイスされなきゃ、俺絶対海堂先輩のこと押し倒して既成事実作ってましたよ」
「既成事実って君ね…。まあ今にも喰らい付きそうな眼で海堂を見てたのは確かだね」
何故あれだけ欲望にまみれた視線を毎日おくられていたのに、越前の気持ちに気付かなかったのか…。海堂の鈍さには驚くばかりである。
事が起きる前に上手くまとまってくれ、不二を含む3年生の数名は胸を撫で下ろしていた。
「ところで『子猫ちゃん作戦』で海堂を落とした後、本性見せて上下関係ははっきりさせるって言ってたけど、どうなったんだい?」
この作戦じゃ自分を「受身」として海堂に認識されてしまうのでは…と心配した越前に、早めに態度を豹変させる事を勧めたのも不二なのだ。
「これも不二先輩の言った通り。急に俺が強気に出てディープキスしたら、なんかボーっとしてたけど、『越前であればなんでもいい』みたいなこと言って頬にキスくれたっス」
珍しく嬉しそうにまくし立てる越前に、不二は微笑みうんうんと頷く。
「海堂は一度自分の懐に入れた者に対しては絶対甘いと思ったんだ。もう越前が好きだと気付いてしまったから、文句を言いつつも越前の好きなようにさせてくれると思うよ」
「先手必勝っスね」
誰もいない昼休みの部室でそんな秘密裏の会話がされていたとは露知らず、海堂は一緒にお弁当を食べようと越前を迎えに来た。
「…越前どうしたんだ?部室に行ったって聞いて…」
教室まで越前を向かえに行ったのだろう。クラスメートに部室に行ったと教えられやってきたようだ。
「…あ、不二先輩も」
二人きりで何の話をしていたのかと不安そうな表情の海堂に、越前はご満悦である。
「海堂先輩。ちょっと忘れ物取りに来てたんです。そしたら偶然不二先輩も」
「僕もタオル忘れちゃってね」
何も無かったような顔をして語る二人にあっさり騙された海堂は、ほっとしたような表情を浮かべる。本人はバレていないつもりのようだが…。
「じゃ部室の鍵は僕が返しておくから、二人はお弁当食べに行っておいでよ」
「じゃ、遠慮なく」
そう言って海堂の腕を引く越前の態度に、海堂が申し訳なさそうな顔をして不二に「スンマセン」と頭をさげる。
「気にしないで海堂。あ、そうだ。越前次は僕の方もよろしくね」
何がよろしくなのか海堂は不思議そうな表情だが、越前は分かってますとばかりに大きく頷き部室を後にする。
来週あたりからは、手塚がこの二人に振り回されることとなる…。

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